1857年フランス・アルザス地方に創立された「ミュルーズ染織美術館®」は世界に類を見ない染織生地の美術館であり、所蔵されている貴重な資料は多くの一流ブランドのデザインソースとして活用されています。
古くから染織産業が盛んであったこの地域では、18世紀初頭から染織業者等が室内装飾や服飾の染織見本の蒐集を開始しています。それらをもとに美術館が創立され、現在では欧州だけではなく世界各地から蒐集した600万点もの染織資料を所蔵しています。第2次世界大戦の影響で一時閉鎖されましたが、1955年に染織美術館の名前で再建され、現在はフランス文化省の管轄下にあります。
1640年、アジアからマルセイユに上陸したプリント技法が欧州プリント産業の興りと言われていますが、当時フランスでは自国の織物産業を保護するために、国内での綿布の捺染、輸入をも禁止していました。しかし独立した都市国家であったミュルーズは禁止令の影響を受けることはなく新しいプリント生地の製造所が次々と創業しました。フランス革命後は、プリント生地産業を牽引する重要な役割を果たすことになり、現在も世界の一流ブランドのデザインソースにも使われる貴重なコレクションとなっています。